ほとんどの日本酒の色は無色透明で、どれを見ても同じように見えます。
でも、飲んでみると甘かったり、辛かったり、酸っぱかったり、あるいは、サラッとした軽い口当たりもあれば、ドッシリとした重い口当たりもあって、日本酒の表情はみんな違うんです。
日本酒を飲んだことがない人でも、一口ずつ飲み比べてみるだけで甘口と辛口の違いがわかりますよ。
あ、辛口と言っても、カラシやワサビのように「つ~ん」とくる辛さではありません(笑)
甘味が薄いのが辛口と思っていただいたらわかりやすいかもしれませんね。
この記事では、日本酒の甘口と辛口について書いていきます。
1.発酵とは
2.『甘口』と『辛口』の違いが生じるワケ
3.日本酒度
4.酸度
5.まとめ
1.発酵とは
同じ日本酒なのに、、色も無色透明なのに、どうして甘いのと辛いのが出来てくるか不思議ですよね。
それは、日本酒の原料のお米(酒米)を、どれだけ発酵を進めるかによって違ってくるんです。
発酵とは、糖分をアルコールに変えて炭酸ガスを発生させること。
例えば、ワインは原料のブドウに、もともと糖分が含まれているので、酵母を混ぜることによって発酵が始まりアルコールに変わっていきます。
でも、お米には糖分が含まれていないため、いきなり酵母を混ぜても発酵しません。
そこで、お米に含まれるデンプンを糖に変えてあげるために『米麴』加えます(糖化)。
糖ができればワインと同じように酵母を混ぜれば、発酵がスタートします。
日本酒はこの『糖化』と『発酵』が同時に進むんですが、これって珍しい醸造方法らしいですね。
と、いうのは、
ワインは、ブドウの糖分を酵母で発酵させるだけなので『糖化』はありません。
ビールは、(米と同様に)大麦に糖分が含まれていないのでデンプンを麦芽によって糖化させますが、酵母を追加して発酵させるのは別のタンクになります。
繰り返しますが、『糖化』と『発酵』を同じタンク(同時)で行うのは、日本酒ぐらいのようです。
昔の人は、よくこんな製造方法を考えたと言うか、見つけたと言うか、、、すごいと思う。
2.『甘口』と『辛口』の違いが生じるワケ
『甘口』と『辛口』の違いが生じる理由は、その『発酵』の度合いによるものです。
発酵は、酵母が食べた糖分をアルコールと炭酸に変化させます。
もう、何となくおわかりかと思いますが、酵母が糖分をたくさん残した状態で発酵を止めると甘口になります。
反対に、酵母に糖分をたくさん食べさせて発酵をどんどん進めると辛口になります。
3.日本酒度
では、日本酒を購入する際に、『甘口』『辛口』を見極めるにはどうしたら良いかというと、ラベルに書いてある『日本酒度』で見分けられます(これが書かれていないものもありますが)。
日本酒度は『+3』とか『-4』とか表示されていますが、プラスが辛口で、マイナスが甘口です。
甘いのにマイナス表示というと「えっ?」って思われるかもしれません。
これは水に対する比重になっていて、糖分が多い甘口の日本酒は水より重くなるので水から見るとマイナスになります。
反対に糖分が少ない辛口の日本酒は水より軽くなるのでプラスの表示になります。
日本酒度が+10以上になると、けっこう辛く感じ、逆にー10以上になると甘く感じます。
ただ、これはあくまでも目安で個人的な感じ方や、次に書く『酸度』によってまた変わってきます。
個人的にというのは、例えば、辛口が好きな僕の場合、日本酒度が+3とか+4では辛口なのに、飲んでみると甘口に感じることが多いです。
これが日本酒の面白いところのひとつでしょう。
人それぞれだから、感じ方はみんな違いますよね。
日本酒度の数によって甘口と辛口に分ける基準は一定していないようですが、僕は下記のように思います。
日本酒度 | 甘口/辛口 |
+10以上 | 大甘口 |
+5~+9.9 | 甘口 |
+1~+4.9 | やや甘口 |
+0.9~-0.9 | 中口 |
-4.9~-1 | やや辛口 |
-9.9~-5 | 辛口 |
-10以上 | 大辛口 |
上記のような日本酒度の表で、甘口と辛口に分けている説明をよく見ますが、僕は甘口と辛口の中間(±0)の前後に甘口でもない辛口でもない『中口』というモノがあっても良いかと思います。
4.酸度
もうひとつ、『日本酒度』とセットで判断される指標に『酸度』があります。
これは、乳酸、リンゴ酸、コハク酸などの含有量を表していて、それらの酸度が高いと濃淳に感じ、低いと淡麗に感じます。酸っぱさとはちょっと違うかな。
酸度というと酸っぱいというイメージを浮かべるかもしれませんが、そうではなく、簡単に言うとスッキリとした淡麗タイプか、ドッシリとした濃淳タイプかの違いです。
酸度の数値は、だいたい0.5から3.0の範囲内で、平均が1.4前後、数値が小さい方が『淡麗』、大きい方が『芳醇』になります。
『日本酒度』に、この『酸度』を重ね合わせると『淡麗辛口』や『淡麗甘口』『芳醇辛口』『芳醇甘口』に枝分かれします。
『淡麗辛口』は日本酒を飲まない人でも耳にしたことがあるでしょう?
日本酒のタイプは、この4つに分かれますが、これも感じ方は人それぞれで淡麗を芳醇と感じたり、その反対に感じたりして、そこも日本酒の面白さだと思います。
僕は、かなりスッキリした淡麗タイプの日本酒が好きなので、ラベルに『淡麗』と書かれていても、芳醇に感じることがよくあります。
日本酒は、こうやって飲む人により基準が変わってくるので『日本酒度』や『酸度』は目安にしてください。
一般的に甘口というと西日本の日本酒に多く、辛口というと東日本の日本酒に多く見られます。
また、淡麗というと東日本の日本酒に多く、芳醇というと西日本の日本酒に多いです。
これも日本酒を選ぶ時の楽しみのひとつですね。
あなたは、どのタイプがお好きでしょうか?
地域性からいうと『甘口』『芳醇』は西日本の人に好まれ、『辛口』『淡麗』は東日本の人に好まれることが多いようです。これは、その地域の特徴的なお酒なので、その地域で好まれるのは当たり前かもしれませんが…。
性別でいうと、女性は甘口を好み、男性は辛口を好むことが多いようです。
その人の好みだけではなく、日本酒を飲む時の季節や、料理とのペアリングなどによっても、選び方や好みは変わってきますね。
そのへんの踏み込んだところは、また別の記事で書きたいと思います。
5.まとめ
・日本酒は発酵の度合いによって『甘口』と『辛口』に分かれます
・『甘口』と『辛口』の判断をするには、ラベルに記載されている『日本酒度』を見て下さい
・甘口と辛口の感じ方は、糖度(日本酒度)の違いだけでなく『酸度』の違いによっても変わってきます
・『日本酒度』と『酸度』を重ね合わせることによって、さらに4つのタイプに分かれます
・これらの区分は、あくまでも数値的なものです。実際の感じ方は人によって変わるので、これらの数値は目安にした方が良いでしょう